
ヤマハ用具契約選手であり、ツアー通算14勝の有村智恵プロ。昨年の本大会で出産からのツアー復帰戦を果たし、2026年大会にも出場しました。結果は、1日目「81(+9)」、2日目「73(+1)」でトータル「+10」で残念ながら予選通過はなりませんでしたが、ホステスプロとして大会を大いに盛り上げていただきました。
2017年よりヤマハゴルフの顔としてともに歩みを続けてきた有村プロに、予選ラウンド終了後、特別にお話を聞かせていただきました。
─予選2日間を戦い終えての感想を聞かせてください
有村:すごく手応えはあったんですけど、グリーン上で苦戦をしてしまったので、まだまだ練習しなきゃいけないなと思う部分がたくさんありました。やはり試合にならないと見えない難しさというか。このパットがちょっとでも強く入ったり変に当たったりしたら、すごくパットが残ってしまうんじゃないかとか、本当に怖くなるんですよ。
傾斜がしっかりとあるところにカップが切ってあって、完璧なパットでなければ絶対に外れるのがわかるので、どんどん完璧を求めてしまって余計に硬くなったというのはありますね。1日目のラウンドは風も相まって、力が入り気味だったと思います。

ショットに関しては本当に手応えがすごくありますし、このコースでできたことで前向きに捉えている部分もあります。あとはショートゲームも課題だったんですけど感触は悪くなかったので、本当にパッティングを決めきれなかったというだけで、課題としていた部分はひとつクリアできたなとは思います。
─グリーン上で苦戦したというのは、過去の葛城のイメージや経験がよぎるのでしょうか
有村:それはありますね。特に1日目は、前日の雨の影響もあって実際はスピードが例年に比べるとそんなに出てないのに、ちょっと打ち出せないというか。当日は晴れてるし、風も吹いてるので、行ってしまいそうな気持ちになるんですけど。パッティングのタッチは、全体的にショートして、ロングパットでは2〜3mショートしたりとか、タッチをあわせるのに本当に時間がかかったというのはありますね。
─長年バッグを担がれている小田亨さんとのタッグはいかがでしたか
有村:もう相変わらずですね。小田さんは、基本的に自分で考えさせたい人なんですよ。何でもかんでも人に聞くんじゃなくて、最後は自分で気づかなきゃダメだよっていう人なんですけど、最終ホールで「アプローチは今日も調子よかったんで、アプローチとパターが何が違うのか考えた方がいいよ」って言われて。「何が違いますか」って聞いたら「自分で考えて」って言われて。全然答えられないからどう違いますかって聞いたのに、そこはもう「最後は自分で気づいて」って言われて。答えを教えてもらえないまま帰ってきました(笑)。
─次の戦いに向けるというところは
有村:本当にパッティングに尽きると思っています。もともとパッティングが得意な方ではなかったので、その課題は相変わらずなんですけど。
ラインのイメージだったり、自分のスピード感というものに対して、本当に自信を持って打てるかどうかというのは、結果入る入らないは別として、自分の努力次第ではどうにでもできることだなと思うので、次戦ではもっと自信を持って気持ちよく打ったという回数を重ねたいなというのはありますね。
─次戦の予定は
有村:KKT杯バンテリンレディスオープン(4月16日〜19日/熊本空港カントリークラブ)に出場します。地元熊本の試合なので楽しみです。この試合もホステスプロなのでプレッシャーはありますが、ヤマハレディースとはまたちょっと違うんですよね。熊本空港CCもグリーンは割と難しい方ではあるんですけど、難しさが違うというか。葛城はコースも距離もしっかりあるし、グリーンもすごい形状なので、プレッシャーのかかり方が違いますね。

─ヤマハとの出会いについて聞かせてください
有村:明確に覚えてます。ヤマハの責任者の方にプレゼンしていただきました。ヤマハゴルフといえばどんなイメージかという話で、いろんなデータを取ったところ、ヤマハゴルフといえば『藤田寛之』と答えた人が8割だったそうで、まず女子で名前が出る人ということで声をかけていただきました。
それから、私が背負うことになった「インプレス」というブランドが、「昔の自分の飛距離を取り戻す」というか、「昔のゴルフを復活させる」という人たちがターゲット層だったこともあって。私はその時スランプに陥ってアメリカから帰ってきた時だったので、私の復活を「インプレスと共に歩んでみませんか」とプレゼンをされて。当時の私にそんな風に言っていただけるんだったら「ぜひ」という話をしたのはすごく覚えています。
「こういう思いを持って、あなたと契約をしたいと思ってます」と言っていただけたことですごく動いた部分と、ただ契約してもらってただクラブを使うだけっていう関係値ではなく、自分がヤマハとともに復活をして、「インプレス」というブランドがいろんな人たちのこれからのゴルフに刺激を与えられるようにしたいなと、自然にそういう思いになりました。
─有村さんのクラブのこだわりは
有村:こだわりはありますね。私はもともとフェードヒッターなので、左に一度しっかり出るかどうか。つかまった上で強いフェードを打てるクラブになかなか出会えなかったので、そこは細かくこだわりました。
─ヤマハ契約でのツアー生活で、印象に残る一打はありますか
有村: たくさんあるんですけど、まず思い出すのは、「RMX VD」の3番ウッドができて、3〜4ヤードぐらいしかない鳥かごの練習場で試打した時に「これめっちゃいいね!」と言ったことを覚えてます。データもすごく良かったし、感触も良かったし、あれは衝撃でしたね。
それ以外にも、今使っている6番ユーティリティ(?)が出た時ですね。それまで6番アイアンを使うホールというのは、ボギーにしやすかったんです。普通ユーティリティはロフトがあるので捕まりやすくフェードが打ちづらいんですが、フェードが打てる6番ユーティリティに出会えて、400ヤードのミドルホールでのセカンドショットがすごく楽になりました。逆にバーディを狙っていけるくらいになったので、そういうギアとの出会い、何回か「ビビッ」とくる出会いはありましたね。
─今後のクラブに関して
有村: 正直、本当に悩んでいます。どのクラブがいいかというよりも、そもそも自分自身がそこまでクラブに詳しいわけではないので、「ここをこう調整してほしい」といった細かい要望を言葉で明確に伝えるのが難しいんです。どうしても「もうちょっと捕まえたい」とか「もうちょっと走らせたい」といったニュアンスでしか伝えられなくて。
これまでは、その曖昧な要望をツアーレップの方々がしっかり汲み取って形にしてくださっていました。長年一緒にやってきた関係もあって、自分の癖や好みも早い段階で理解していただけていたので、その部分での苦労はほとんどなかったですし、仕上がりもすごく早かった印象があります。
これまではヤマハの技術にかなり頼っていて、任せればイメージ通りのものが返ってくるのが当たり前だったので、その前提が変わることへの不安は大きいです。とはいえ、梶山さんも今後しっかり引き継げるようにサポートしてくださると言っていただけていますし、自分としてもこれを機にクラブについてもっと理解していかないといけないなと思っています。
─今年のヤマハレディースオープン葛城に出場しているアマチュアを除くプロゴルファー選手(112名)の平均年齢は何歳だと思いますか?
有村:うーん、ちょっとわからないですね。今のシード選手の平均年齢は25歳くらいですか?
─正解は「27.3歳」でした
有村:なるほど。私の周りのベテランの選手は葛城が好きなんですよ。仲の良い原江里菜もそうですし、藤田さいきさん、全美貞さん、(穴井)詩ちゃんとか。年齢を重ねた選手たちは、技が出せる葛城が好きですね。

─今大会の最年少は、初日トップタイだった18歳の伊藤愛華選手でした
有村: 一緒に練習ラウンドを回ったのですごく嬉しかったですね。誘ったのは、同じウェア契約で開幕前に会っていて、また通っているジムが一緒だったからです。本当に真面目に取り組んでいる選手だなと感じました。
ただ、開幕からスコアを崩していたのが気になって話を聞いてみたくて。一緒に回ってみると調子自体は悪くなくて、むしろ真面目さゆえに細かく考えすぎている印象でした。プロになって「もっと細かくやらなきゃ」という意識が強くなりすぎていたんだと思います。
もっと思い切って振ればいいのに、とは思っていましたが、すぐには難しいだろうなとも感じていました。それが1日目の段階で対応してきたので、適応力が高くて、きっかけを掴めば一気に伸びる選手だなと感じました。
実際に話を聞いても、自分の状態やミスの傾向をしっかり言語化できていて。「今それが自分で分かっているのはすごいことだよ」という話もしましたし、全然心配はいらないなと思いました。
─これからの選手たちに有村さんが伝えたいことはありますか
有村: 今の選手は本当にゴルフがうまいですし、考え方もしっかりしている選手が多いと思います。ただ、あまり型にはまりすぎない方がいいのかなとも感じています。
長年いろんな選手を見てきましたけど、デビュー当時とまったく別人のようなスイングになった選手って、ほとんどいないんですよね。結局、見た目はそこまで変わらないというか、大きくスイングが変わることって体の構造上あまりないんだと思います。
どうしても今流行っているスイングや、結果を出している選手の真似をしたくなると思うんですけど、そこに完全にたどり着くことは難しい。だからこそ、自分はどういうスイングなのか、自分の良さは何なのか、そこをちゃんと追求できる選手の方が結果的に上にいくんだろうなと思います。
あとは、型にはめる練習というよりも、結局は「いい球を打って、どれだけピンに近づけられるか」にこだわっている選手の方が強いなと感じます。今は理論から入れる環境が整っている分、形ばかりに意識がいきがちですけど、最後はしっかりピンを向いて、どう近づけるか、どうパットを決めるか、そこにフォーカスしてほしいなと思います。
周りの目を気にしていろいろ考えることもあると思いますが、最後はそこを貫ける選手が強い。本当に自分が気持ちよくピンに向かって打てるイメージをしっかり持って、そこに全力で向かっていってほしいなと思います。
理論が悪いわけでは全然ないんですけど、最後に勝つ選手って、理論を一生懸命意識しているというよりは、「どういう球を打つか」というイメージの方がしっかりできている選手が多いなと思います。
特に緊張した場面だと、頭も体も思うように動かなくなるので、最後はそういう感覚やイメージの部分が、勝敗を分けているんじゃないかなと感じています。
─プロになるといろいろな情報が入ってきて、自分に必要な情報とそうでない情報を取捨選択することも大事だと思いますが
有村: 私が現役でバリバリやっていた頃は、今みたいにSNSがここまで普及していなかったんです。ネットを開けば自分のスイングが出てくるような環境でもなかったですし、テレビを録画して帰って見る、というくらいでした。
今は情報も多いですし、取捨選択も難しいと思うんですけど、外から見ていて感じるのは、選手に届く批判的なコメントって本当に一部だということです。実際には応援してくれている人の方が圧倒的に多くて、ただコメントをしない人たちなんですよね。コメントしている人の中でも、批判的な声はさらに一部に過ぎないと思います。
ただ、そういうコメントを目にすると、どうしてもネガティブに引っ張られてしまったり、「こうしたらこう言われるのかな」と考えてしまいがちです。でも本当は、それ以上に応援してくれている人がたくさんいるということは、外に立ってみるとすごくよく分かります。
なので、そういう事実は知っておいてほしいですし、必要以上に気にして、自分のいい部分まで消してしまうようなことはしてほしくないなと思います。
─周りの皆さん、チームの皆さんに支えられているんですね
有村: そうですね。本当に皆さんに支えていただいて、今があると思います。
(インタビュー/廣兼 祐介、文・写真/菅沼 昌喜)